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留学体験記 清水雄嗣先生Study Abroad Experience(Dr.Shimizu)

私は2019年4月から静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科にレジデントとして国内留学させていただいておりますので、その体験を報告いたします。

静岡がんセンターについて

静岡県立静岡がんセンター

患者さんがゆったりできます

 私は浜松医科大学卒業後、第2外科の医局に入局して外科医としての研修を開始しました。浜松医科大学附属病院と浜松医療センターのたすき掛けプログラムで初期臨床研修を行ったのち、外科後期研修医として県内の病院で計4年間の勤務を行い、多くのcommon diseaseの診療や執刀、高難度手術の見学などを行いました。そのなかで特に肝胆膵領域の疾患・治療について深く学びたいと考え、研修医の時にお世話になった先生の影響もあり、静岡がんセンター(通称:静がん)のレジデントへ応募しました。幸運にも採用していただき、現在はレジデントとして勤務しています。
 さて、静がんは静岡県の東部、駿東郡長泉町の山の上に建っています。病床数615床、41診療科を標榜する癌に特化した専門病院です。2002年に開院した病院ですが、内装はとてもきれいで清潔感があります。患者さんがゆったりできるラウンジや庭園、患者さん用の図書館、展望浴室など通院・入院患者さんへの心配りにあふれた作りになっています。 
 長泉町はのどかな町並みで、いわゆる田舎です。サルとか出ます。繁華街のような賑やかさはありませんが、少し足をのばせば沼津港のおいしい魚介や伊豆の温泉を堪能でき、疲れた体を癒すには最適です。

レジデント生活

肝胆膵外科の医師たち

 静がんの肝胆膵外科には上坂克彦院長、杉浦禎一部長以下スタッフ6名、レジデント10名が在籍しており、出身地・医局もさまざまです。これだけ多くの肝胆膵外科医に囲まれて仕事をするのは初めての経験でしたし、これまで静岡県内の病院でしか働いた経験のない私にとって、他の医局の先生の話を聞いて文化を知ることができるのは非常によい収穫であり、刺激にもなっています。レジデント同士の仲もよく、切磋琢磨しながら頑張っています。
 静がんのレジデントコースは2種類あり、基本のレジデント(3年間)、その上級のチーフレジデント(2年間)です。レジデントはローテート制度で、自科は最大2年まで、残りの1年(希望すればそれ以上)は他科を回ります。ローテート先や期間も自由に選択できますので、興味ある分野の知識をより深めることも幅広く学ぶこともできます。

手術について

年間400例を超える手術数

 静がん肝胆膵外科では年間400例以上、うち膵頭十二指腸切除術などを含む高難度手術は200例以上と多くの手術を行っており、全国第2位の手術件数を誇っています。静岡県という立地や人口密度を考えると驚異的な数字です。肝門部領域胆管癌等に対する大量肝切除や肝膵同時切除、血行再建を伴う切除など特に難易度が高い手術にも積極的に取り組んでおり、その成績も非常に良好です。
 われわれレジデントは週に1-2件の担当症例が割り振られ、その手術にはスタッフの先生の第一助手もしくはスタッフの先生に助手をしてもらって術者で執刀することになります。ほかに週2件程度第2助手として手術に参加します。手術に入らない日は病棟業務などを行っていますが、時間ができたときは手術見学に自然と足が向きます(Fig.6)。このように多くの手術を体験したり間近に見たりして勉強できるのは最大の魅力です。
 術後の管理も徹底しています。特にドレーンの管理には細心の注意を払っており、少しでも懸念事項があれば積極的にドレーン交換(通称:カテ交)を行って経過を診ます。そのためClavien-Dindo分類classⅢaの頻度は多い傾向がありますが、classⅢb以上の重症合併症の頻度はかなり低くなっています。これだけの件数の大手術を行っていながら重篤な合併症が少ない点も特筆すべきポイントです。

カンファレンス

プレゼンで使用する手書きのイラスト

 当科での高難度手術や良好な成績を支えているといっても過言ではないのが、毎週月曜夜に行われるカンファレンスです。基本的にスタッフ、レジデント全員参加で、前週の手術の報告と振り返り、病棟入院患者さんの経過報告・相談、当該週の術前プレゼンテーション、相談事項がある症例の検討などを行います。非常に濃密な議論が交わされ、大変勉強になります。基本的にプレゼンテーションはレジデントが行います。自分で考えて意見を述べることが求められ、「先生はどう思うの?」と問いかけられます。自分の担当症例で議論が白熱(炎上)したときは涙が出ます(感動で)。肝門部胆管癌(通称:肝門部)の症例ではスタッフ、レジデントとも特に熱が入ります。肝門部のプレゼンでは肝臓・肝十二指腸間膜周囲の解剖のイラスト、切離後のイラストを提示しつつ説明します。この“お絵描き”、非常に描くのに時間がかかるのですが、かなり勉強になります。何度もCTや教科書を見返して絵を仕上げるころには、患者さんの解剖は頭の中にインプットされていますし、手術のイメージもできてきます。が、スタッフの先生たちからしてみれば違和感満載で、的確な突っ込みをいただきます。指摘をされたときはヘコみますが、そうやって自分なりに考えてプレゼンテーションした症例の手術に入ることで、何倍も勉強になります。巨匠たちに一歩でも近づくべく、落ち込んだときはレジデント同士支えあいながら日々頑張っています。

学術活動

レジデントのデスクは、ひとり1席

 診療業務や手術だけでなく、学会発表や論文執筆など学術活動も盛んに行っています。レジデントには一人ひとり十分な広さのデスクが与えられており、病院から学会発表や英語論文作成への金銭的支援もあるため、かなり学術活動が行いやすい環境です。当院では救急症例がほとんどないため、日中の業務が終わった後は自分の勉強などの時間が十分とれるのもありがたいです。
 レジデントにはスタッフが指導につき、研究テーマについてディスカッションを行ったりしつつ形にしていきます。とても細かな指導を受けられますし、貴重な意見をもらえるので学術面でも徐々に成長している実感があります。自分が経験したことや、努力して勉強したことが目に見える形にまとまっていくことには非常にやりがいを感じます。
 私は、昨年1年間は他科のローテートもあり肝胆膵外科在籍期間は半年間でした。それでも多くの手術に携わらせていただき、非常に充実した時間を過ごせました。
 最後になりますが、私に国内留学の機会を与えてくださった竹内教授、坂口先生、森田先生をはじめ、医局の諸先輩方にこの場をお借りしてお礼を申し上げます。大学に残って頑張ってくれている同期の村木先生、ありがとう。先生に負けないよう、私も頑張ります。