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肝胆膵外科


臨床研究

①肝切除術においてモノポーラソフト凝固とバイポーラソフト凝固を使用した際の手術成績の検討

両者の利点と欠点を明らかにするとともに、実臨床で使用する際の注意点について報告しました。

②膵癌手術後の体重減少が術後補助化学療法の継続性に与える影響に関する検討

膵切除の周術期には積極的な栄養管理やリハビリ介入を行って、著明な体重減少が起こらないような術後管理を心がけています。

③膵液漏と胃内容排出遅延のリスクに基づく膵頭十二指腸切除術の周術期管理方法の検討

膵切除の周術期には漫然とした補液を行わないように、周術期輸液管理を変更しました。

基礎研究

①非アルコール性脂肪性肝疾患に起因する肝細胞癌の悪性化メカニズムにおけるcaveolin-1の役割

non-alcoholic fatty liver disease (NAFLD)由来の肝細胞癌において膜タンパクであるcaveolin-1が高発現しており、脂質が豊富な環境での生存を有利に進められるように機能していることを見いだしました。これにより、増加傾向にあるNAFLD由来の肝細胞癌は、肝炎ウイルス由来の肝細胞癌と分子生物学的に大きく異なることが分かり、新たな治療標的の発見に繋がる知見と思われました。

②細胞膜に含まれる飽和脂肪酸は大腸癌細胞株における5-FUに対する耐性を誘導する

大腸癌細胞株で飽和脂肪酸が結合したホスファチジルコリンが細胞膜に豊富に存在しているものは、細胞膜の流動性が低下し、5-FUに対して抵抗性を示すことを見出しました。これにより、細胞膜の脂質組成を調整することで抗癌剤の感受性が変化するという、新たな治療標的の発見に繋がる知見と思われました。

③胆汁中エクソソームに含まれるホスファチジルコリンは胆管癌の新規バイオマーカーとして有用である

胆汁中のエクソソームと呼ばれる細胞外小胞に着目し、エクソソームのホスファチジルコリン含有量が、胆汁細胞診よりも診断精度の高いバイオマーカーとなり得ることを報告しました。胆管癌患者の胆汁中エクソソームには、脂質(とくにホスファチジルコリン)が多く含まれている。これにより、術前診断の難しい胆管癌において、新たなモダリティが増える可能性があると考えており、更なる診断能の向上や臨床応用を目指しています。

④腫瘍微小環境におけるTenascin C (TNC)は神経周囲浸潤を促進し膵癌の局所再発と相関する

膵癌神経周囲浸潤陽性例においてTenascin C (TNC)が高発現しており、術後再発のリスク因子であることを見いだしました。膵癌細胞株とマウス後根神経節を共培養しTNCを添加すると、膵癌細胞と神経の相互作用が活性化されることが分かりました。これにより、膵癌神経浸潤における新たな治療標的として、TNCが候補となり得ると考えられました。膵癌の神経浸潤に関しては、膵癌細胞株の中でも神経細胞に対する親和性が異なっていました。それらの違いを明らかにするために遺伝子発現解析を行ったところ、Ephrin receptor A4 (EPHA4)が膵癌細胞の神経浸潤に重要な因子であることが分かりました。これにより、膵癌神経浸潤における新たな治療標的として、EPHA4も候補となり得ると考えられました。

⑤Ephrin Receptor A4 (EPHA4)の発現は、膵癌細胞の遊走、浸潤および神経向性を増強する

膵癌の神経浸潤に関しては、膵癌細胞株の中でも神経細胞に対する親和性が異なっていました。それらの違いを明らかにするために遺伝子発現解析を行ったところ、Ephrin receptor A4 (EPHA4)が膵癌細胞の神経浸潤に重要な因子であることが分かりました。これにより、膵癌神経浸潤における新たな治療標的として、EPHA4も候補となり得ると考えられました。

論文

1. Comparison of operative outcomes between monopolar and bipolar coagulation in hepatectomy: a propensity score-matched analysis in a single center. Cancer Med. 2023 Apr 25. BMC Gastroenterol. 2022 Mar 29;22(1):154.
2. Body weight loss after surgery affects the continuity of adjuvant chemotherapy for pancreatic cancer. BMC Cancer. 2019 May 2;19(1):416.
3. A comprehensive strategy for perioperative care of pancreaticoduodenectomy according to the risk stratification by pancreatic fistula and delayed gastric emptying. Asian J Surg. 2022 Jan;45(1):172-178.
4. Role of caveolin-1 in hepatocellular carcinoma arising from non-alcoholic fatty liver disease. Cancer Sci. 2018 Aug;109(8):2401-2411.
5. Saturated Fatty Acids in Cell Membrane Lipids Induce Resistance to 5-Fluorouracil in Colorectal Cancer Cells. Anticancer Res. 2022 Jul;42(7):3313-3324.
6. Phosphatidylcholine in bile-derived small extracellular vesicles as a novel biomarker of cholangiocarcinoma. Cancer Med. 2023 Apr 25.
7. Tenascin C in the Tumor-Nerve Microenvironment Enhances Perineural Invasion and Correlates With Locoregional Recurrence in Pancreatic Ductal Adenocarcinoma. Pancreas. 2020 Mar;49(3):442-454.
8. Ephrin Receptor A4 Expression Enhances Migration, Invasion and Neurotropism in Pancreatic Ductal Adenocarcinoma Cells. Anticancer Res. 2021 Apr;41(4):1733-1744.