留学体験記 羽田綾馬先生Study Abroad Experience(Dr.Haneda)


外科学第二講座の国内留学として2019年4月から2020年3月まで静岡県立静岡がんセンターで1年間研修して参りましたので紹介させて頂きます。
国内留学に至った動機
私は平成25年度に浜松医科大学を卒業後、静岡県内の複数の病院で初期、後期研修を積んで参りました。その中に食道疾患に対する外科治療を積極的に行っている施設での研修がありました。高度な専門性と手術の難易度、高い侵襲性に対する周術期管理の重要性などを肌で感じ、食道外科領域にやりがいを感じました。今後食道外科医としての研鑽を積んでいく上でさらに自身の見識を深めたいと思い、大学レジデントの時に国内留学の希望を出しました。
静岡県立静岡がんセンターについて
長泉町での生活
日常診療から感じたこと
1年間のローテーションでは食道外科、頭頸部外科、麻酔科にて研修をさせていただきました。最も長く研修させていただいた食道外科について触れたいと思います。食道外科は3人のスタッフとレジデント(私と他科からのローテーションの先生)で構成されており、全員で手術と病棟管理とを行っています。スタッフの先生方はみな気さくで雰囲気がとてもよく、不勉強な私の疑問に対してもしっかりと聞いて頂き、アドバイスをしてくれました。日常診療の中で、最も印象的であったのが治療方針決定のために行われる科内カンファレンスと消化器内科・内視鏡科・放射線科との合同カンファレンスでした。食道癌は切除可能進行癌では術前化学療法+手術が標準治療であり、切除不能例では化学(放射線)療法が適応となるなど他科との関わりの強い癌腫です。カンファレンスでは専門科による内視鏡読影と診断、表在癌では内視鏡下粘膜下層切除(ESD)のプランニングなどが提示されます。消化器内科・放射線科それぞれのプロフェッショナルからは化学療法、放射線治療のレジメンや適応について意見を述べられ、そこに外科からの立場で関わっていく、高いレベルでのコミュニケーションに感銘を受けました。手術では高難度手術の技術、先進的な医療機器など最先端の医療に触れた一方で、私への手術手技の指導も懇切丁寧に行って頂き、貴重な食道外科手術の経験を積むことができました。
多職種チーム医療
学術的な支援について
食道外科研修では週4日消化器内科と合同で勉強会を行っているほか、院内勉強会も盛んに行われており、教育面でも充実しています。消化器内科との勉強会では様々な悪性腫瘍における世界最先端の報告や知見に触れたり、ASCOなどの海外学会から持ち帰ってくるトピックスの報告を聞いたりすることで、これまでの自分にはなかった見聞を広げるきっかけとなりました。院内勉強会はがんゲノム診療や統計学といった独学ではなかなか学びづらい分野について専門家の講義を受けることができ、基礎的な部分から勉強することができました。また、電子書籍やジャーナルも幅広くそろっており、学習環境として非常に恵まれているのも印象的でした。
同期、先輩レジデントとの関わり
おわりになりますが、国内留学の機会を与えて頂いた浜松医科大学外科学第二講座教授竹内裕也先生、ならびに留学を快く迎え入れて頂いた静岡県立静岡がんセンター食道外科部長坪佐恭宏先生に心から御礼申し上げます。また坪佐恭宏先生、石井賢二郎先生、坊岡英祐先生らスタッフの先生方皆様に多くのご指導とお力添えを頂きました。この機会に誌上を借りて厚くお礼申し上げます。
