膵癌について②
膵癌の治療
手術
膵癌を根治できる唯一の方法です。膵臓の手術は腫瘍の部位により異なります。頭部に出来た場合は膵頭十二指腸切除術が、尾部に出来た場合は膵体尾部切除術が行われます。膵癌診療ガイドラインではStageIIまでが対象となります。しかしStageIIやStageIIIで周囲の血管への浸潤があるが、再建が可能な場合は合併切除を行います。現在では診断時に進行している場合でも、化学療法を行うことによって手術を行える可能性もあります。術前化学療法の最適な方法に関しては、現在も多くの臨床試験で検証が行われています。
化学療法
化学療法も複数の種類があり、患者の状態により選択しています。手術治療後の再発予防としては、TS-1を選択しています。手術が出来ない場合は、ジェムザール(GEM)+ナブパクリタキセル(nabPTX)や複数の抗癌剤を組み合わせたmFOLFIRINOXを行っています。年齢や全身状態を考慮して、その他の薬剤に変更することもあります。
放射線治療
化学療法と併用し、特に局所における膵癌の進展に対して効果があるとされています。
集学的治療について
かつては、膵臓癌は不治の病とされ、発見される患者さんの8割はStageⅣの高度進行癌で、5年生存率は10%、平均生存期間は1年という時代もありました。最近では、CTやMRIといった画像検査が進歩したことによって比較的早い段階で発見されることが増えたこと、化学療法が進歩して手術前や手術後の補助療法として上乗せ効果が期待できるようになったこと、手術後のリハビリや栄養管理が向上したことによって、治療成績は少しずつ向上しています。我々の施設でも、手術後五年間無再発で経過し、治癒したと思われる患者さんも増えてきています。現在では、膵臓癌が見つかったイコール治らない病気とは限りません。膵臓癌の診断や治療法の選択は、多くの要素を考慮して決定する必要があります。周囲の血管に癌が広がっていて手術はできないと言われたとしても、また仮に遠隔転移があったとしても、長期間化学療法を行うことで手術が可能になることもあります。